体験レポの名を借りた顛末記
これは厳密に言うと体験ではないかも。
成名庵さんの取材途中でのハプニングといった方が良いと思うのだが、せっかくなので記事に
残しておこうと思う。
厳密な体験メニューの記事を期待した方は、今回の話を飛ばしてもらって構いませんので・・・。
その日、編集部の二人は成名庵さんに初めてのご挨拶にうかがった。
家の前で右往左往しているところを家元に一喝されたのが、家元との初めての出会いとなった。
緊張が走った。「これは取材にならないかもしれない」とひとりがつぶやく。その言葉に同意するよりない。
玄関先をウロウロ、虫が入るのも構わず戸も閉めないでキョロキョロしていた二人は、充分に不審かつ失礼をしてしまったというわけだから。
なにも言わず奥座敷に通された。自然と正座が固くなる。家元はどこに行ったのだろう?よくある5分が永遠に感じるシリーズである。
永遠が過ぎ、家元が戻られた。
「で、どのような用件で来られたの?」
「くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp」と熱く語ったことを思い出す。
そうこうしているうちにだんだんと打ち解け、遠州流について、茶道の効用について、活けている花はすべて庭の草花を家元がアレンジしていること、お稽古で使う和菓子も全て家元が手作りしていること、書ききれないほどの情報を家元より授けていただいた。
小一時間経ったころだろうか、家元から「せっかくだから和菓子食べてみる?」。その言葉にうなづく以外の選択肢はなかった。
「足もくずしなさい」。茶道の作法としてはいかがなものかと思いつつも、すっかり胡坐をかく二人。
家元のお手製である寒天、卵白と梨を固めた和菓子、美味しゅうございました。
茶道それ自体の体験ではなかったのだが、茶道とは何かを教えていただき、そして家元の心遣いが茶道の極意であると、いま思い返すことができる。
そんな体験をここに記させていただいた。